「スイッチひと押し」でできる小さな成功体験を、
子供達に届けたい
障害の重い子ども達に「自分の力だけで」
かんたんに遊べるはじめの一歩を作りたい
私の息子は、重度の障害を有しています。幼かった頃、日々の暮らしの中で私がずっと感じていた「もどかしさ」。それは、どうしても息子自身が「受け身」になってしまうということでした。
家の中でも、療育・リハビリの場でも、息子が何かオモチャで遊ぼうとすると、どうしても私や支援者が後ろから手を添えることになります。自分でうまく手を使えないため、自力でオモチャを触ったり、動かしたりすることが難しいからです。
一緒に手を添えて動かす、いわゆる「神の手」。遊ぶ練習を行う上では非常に大事なのですが、それを繰り返し続けていく事は、いつの間にか子どもの「自分でやってみよう」という主体性を薄めていってしまうかもしれないと感じていました。
我が子に、大好きなiPadを自分で操作できる様にしてあげたい
息子の日々のお供になっていたiPad。しかし、自分で触る事は難しく、ただ見ているだけ。
そんな息子が自主的に手を伸ばして、自分から能動的なアクションを行う事ができないだろうか?
そんな一つとして、息子の大好きだったYouTube。親が選んだYouTube動画を再生して見せていたものの、例えば再生途中で広告が表示されると、せっかちな息子はそのたびイライラ。
これを見て「続きを見たければ、自分でスイッチを押して続きを見れる様にすればいいのではないだろうか」と思い付き、息子が押しやすいスイッチで、YouTubeの広告スキップや早送りができる様にしました。これが、M3キューブのはじまりです。
はじまりから数年後。息子は今では、スイッチを使わずに自分の指でYouTubeの番組選択などができる程にまでなりました。
「自分でできた!」という感覚が世界を変える
自分の意思で何かが動いた、音が鳴った、光った。自分のアクションで何かが変わった!
そんな「小さな成功体験」が好奇心を刺激し、「もっと知りたい」「次はこうしたい」という成長の原動力になります。自発的な遊びから生まれる好奇心こそが、子供の成長を形作るのです。
しかし、障害が重い子どもたちにとって、市販のオモチャやゲーム操作のハードルは驚くほど高いのが現状です。ボタンが硬すぎる、iPadなどでゲームをするのもタップが難しい、スイッチコントロールなどのアクセシビリティ設定や接続が難しすぎる……。
最速で必要な人に届けてみたら見えたモノ
これまでは各事例に合わせた機器を独立した形で発明&開発を進めてきました。そんな中、M3キューブという形で汎用的な入力操作デバイスを開発する事になったきっかけ。それは、『iPad視線入力機能+スイッチを使ってピアノ演奏してみたい』という障害当事者の友人からの相談事に応える形で製作した事がきっかけでした。
福祉業界では、市販BTマウスの左クリック部分を改造して3.5mmジャックを付ける様な改造マウスを使う事が一般的ですが、今回は外出時の使用を想定して、
- 持ち運び負担が少ないコンパクトさ
- 他の人に見せて「いいなぁ」と言われる可愛さ(マウス/キーボードなどPC機器っぽくなさ)
を狙って製作しました。
iPadを直接操作する事が難しい方にとって、アクセシビリティスイッチ操作はその方の可能性を広げる上でとても重要な大事なデバイスです。そのため、出来る限り、IT系が苦手な方でも、かんたんかつ確実に使える事が大事です。そのことを踏まえた結果、「ケーブルレスで取り回しの便利なBT無線」だけでなく、「ケーブルを本体に刺すだけで確実に動くUSB有線」機能も使える様にしています。(この辺りは、支援者のITスキルに応じて使いやすい方を使って頂ければと思っています)
モニター提供で見えた、一番人気の価値
1stロットをモニター提供させて頂いたところ、本デバイスの当初の想定とはまた違った価値が見えてきました。一番人気だった価値は「画面上の好きな場所にカーソルを動かすだけで確実に動く」点でした。
M3キューブマウスでは、介助者サポート用としてマウスカーソル移動を付けています。キューブのBボタンを押している間、キューブを前後左右に傾ける事でマウスカーソルを動かす機能です。市販マウスを使う方にとっては、傾き操作によるカーソル操作は少し使いにくいかもしれません。本機能はあくまでちょっとカーソルを微調整する等、常時使用でなく「たまに使えたら便利」くらいの補助機能として実装していました。(その代わり、間違ってマウスを動かしてしまいiPadマウスカーソルがずれてしまう様な、改造マウス固有の課題は本キューブマウスでは起きにくい利点があります)
しかし、実際に開発品をモニター提供させて頂いたところ、このマウスカーソル操作機能が大変好評!
「カーソルを動かすだけで好きなボタンを福祉スイッチで押せるのがありがたい」
「iPadを施設で共有しているので複雑な設定を都度行うのは難しい。簡単に使えるので便利」
この傾きカーソル操作機能を使いやすくするため、2024/12にVer.2として改善対応を行いました。
- 傾きカーソル操作ボタン(Bボタン)を押しやすい位置に移動
- 常時ONモードを用意
- キューブを操作者の手や指に固定できる取付を追加
また、iOS18に更新されて、iPadで視線トラッキング機能が実装されてから、視線検出デバイス無しで視線操作する機能が注目される中で、その「決定操作」をするデバイスのニーズが増えたという点もありました。
そんな小さな成功体験を、日常に届けたい。











